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第236号より


東洋の<線>の自由さと西洋のデッサン力

金田弘治氏の作品

藤 克也 (美術評論家)







 金田さんの作品を見て、まず最初に思い浮かんだのは、平安時代に描かれた、「鳥獣戯画」です。鳥羽僧正の作と伝えられるその表情あふれる線描と、金田さんの人物をとらえる線の自在闊達さには共通するものがあります。「鳥獣戯画」に見られる筆線だけの表現というものは白描画と呼ばれていますが、その起源は書と深く結びついた古代中国の絵画に遡ることができ、東洋の美術において、[線]こそ絵画の生命であることはいうまでもありません。しかしながら金田さんの線描は、昨今の絵手紙ブームにあらわれている、いわゆる趣味的な俳画のようなものと一線を画しています。

そこには、東洋的な線のおもしろさとともに、対象をしっかりと見据えようとする的確なデッサン力というものが同じく存在しているのです。
 金田さんは、若い頃からデッサンと油絵の基礎技術を学び、その素養の上に画廊を開き、現在に至っていると聞いています。東洋の[線]の自由さと西洋のデザイン力が結びついたところに金田さんの作品の魅力があります。その確かなデッサン力はヨーロッパの街並のスケッチにもいかんなく発揮されています。建物へ向かう道からは、金田さんが日頃力説する絵画における[空気]というものを十分に感じとることができます。








 さまざまなポーズをスケッチした人物像の中でも後姿を描いたものは、特に表情豊かであり、ふとこちらを振り返って話しかけてきそうです。そうした線描のおもしろさは「鳥獣戯画」に共通するものだといいましたが、金田さんの作品にはアンリ・マティスの躍動感あふれる線に通ずるものがあるように思います。日本の浮世絵にも関心があったマティスは、西洋美術の伝統に基づく確かなデッサン力の上に、東洋的なしなやかさで自在な表現というものを花開かせました。金田さんの目指しているものもそこにあるのではないでしょうか。 


金田弘治先生のデッサン(18点)とヨーロッパのスケッチ(12点)を特集した第236号を無料で差し上げています(送料当社負担)
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